シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『ブラ物語』

 

 

 

 

 

 

 

こんなロケーション見たことない!

 

 

 

 

 


『ブラ物語』
     原題:The Bra

 

 

 

 

 

 

あらすじ
  街なかにレールが敷いてある、とある街。家の敷地を出ると目の前はもう線路で、そこが生活する場にもなっている。そのため、主人公が運転する列車が通ると、街の住人はてんやわんや。列車には洗濯物が引っかかるわでもう大変。そんなわけで、列車に引っかかったものを毎回持ち主に返すのが日課となった主人公。そんなある日、主人公がいつものように列車を運転していると、引っかかったのは、なんとブラジャー。こりゃ、どうしたもんか。

 

 

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感想
  こんなロケーション見たことない!の一語につきたい作品です。言葉で伝えるのが難しいのですが、生活が行われる街中に文字通り線路が敷かれ、そこが住人の通り道にもなっていて、柵も何もない。そこを列車が通って、てんやわんや、しかもそれが実在する場所!。その画を観られただけで、この作品を観て良かったなと思いました。


  ただ、惜しむらくは、物語を作る絶好の舞台をブラジャーの持ち主探しの場とした事でしょうか。軽い全否定かもしれませんが、この舞台立てであれば何の題材を使っても魅力的な作品になったはずなのです。主人公は列車に引っかかったものを返しに町の線路を歩く、そこは見通しのつく一本道の鉄道で、実在する魅力的なロケーション、落し物は一体誰のものなのか順々に一本道沿いの家を訪ね歩いて行く、これだけで物語の舞台立てとして完璧な気がするのです。その舞台立てを、監督のやりたい放題、頭の中を具現化したというのが本作だという印象です。台詞を廃した世界観にする事で、多国籍な役者陣を迎え入れるなど、舞台立ての工夫は抜群なのですが。こういう作品があっても良いとは思うのですが。

 

 

 

 

 

観ても良いかも!!!

 

 

 

 

 


以下、ネタバレを含みます。↓↓↓

✳︎ Q&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートに簡易に掲載されているものの詳細な内容になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想


  何度も繰り返してしまいますが、冒頭から見られるユニークな見たことないロケーションには驚かされました。冒頭はワクワクでした。


  鉄道×ブラという、監督が好きなものを合わせたような作品だったですね。こういう作品があっても良いのだろうけど、釈然としません。舞台立てが最高なだけになぁ。ロケーションで使われた町が政府によって取り壊されようとしているという話を聞くと、なおさら別の物語が観たかったなぁ、と思ってしまいます。
  加えて、ブラの相手を探すなら探すで、なぜ後半に線路沿いの道を外れていってしまうのか。町自体が、一本道の物語の構造の根幹を成しているというのに、なんでよく分からない場所の車での検診に行くのか、と鑑賞中つっこまざるを得ませんでした。ただ、それは監督の話を聞くに、途中でロケ地を変えなければならなかったという事情があったようなので、仕方がなかったのでしょうか。でも、何の検診だったのか分かりませんが、あれは恐らく乳がん検診じゃないですか?その機会を潰してブラの相手を探すとか、鑑賞中にないわ、と思ってしまいました。早期発見が大事ですよ。

 

 

 

 

 

 

 監督によるQ&A書き起こし


  東京国際映画祭にて、ファイト・ヘルマー監督、出演者から、もう1人の運転士役ドニ・ラヴァンさん、女性陣からパス・ヴェガさん、フランキー・ウォラックさん、サヨラ・サファーロワ さん、ボリアナ・マノイロワさん、イルメナ・チチコヴァさんが登壇され、Q&Aが開かれました。その際におっしゃっていた事を記したいと思います。
  このQ&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートに簡易に掲載されたものの詳細な内容になります。

 

 

監督
・撮影は2017年の秋頃行い、バクーという町で行ったのだが、途中で警察に止められるなどの事があった。また、途中でプロデューサー1人含むスタッフが機材を持って、逃げられたなんて事もあった。なので、一時期この作品が完成に漕ぎ着けるか分からない時もあった。隣国のジョージアに夜の列車に乗って逃げた事も。ジョージアで地元の撮影隊がお手伝いをしてくれ、途中まで撮影していたような列車と似たような列車を用意してくれて、ジョージアで撮影を続行し、ようやく完成に漕ぎ着けた。この映画のメイキングはこの映画に負けないくらいドラマチック。実はこの映画のメイキングをドキュメンタリー映画にしていて、ドキュメンタリー映画祭では最も高名なアムステルダムのドキュメンタリー映画祭に出品する事が決まった。ドキュメンタリーの方もぜひご覧いただきたい。

 

・物語の着想について
古い町は、現在、政府が壊そうとしていて、代わりにモダンな高層ビルを建てようとしている。なぜアゼルバイジャンが好きかというと、そういった古い建築があるからだが、そういった古い町が消えていこうとしている。以前撮った作品の『Tuvalu』も本作に似て、台詞がほんの少しなのだが、台詞ありの他の作品は、ドイツ語のことわざのようなもので、「自分のジャケットを着ているような感じがしない」という感覚がある。台詞ありはちょっと違和感がある。本作は原点に帰ってきた作品。バクーという町を見て、これはすごいと、絶景に感動した。映画でも見たことないのない絶景。待ちに待った、自分の台詞のない映画の題材にしたいものが目の前に現れた。ようやく原点に帰ったからこそ、『Tuvalu』にも出てもらったドニさんとトゥルパン・カマトバさんに本作で出演してもらえたのは、とても監督としては大事な事だった。他のキャストとも仕事が出来て誇りに思う。台詞がないと言葉の壁を超えられる。色んな国の役者と自由に協業することができた。スペイン、ブルガリア、フランスなど、色んな役者をキャスティングした。台詞がないと難しいという役者もいれば、自ら進んで嬉々としてやってくれる役者もいて、今回この作品に出演してくれた役者さんは自ら進んでやってくださった。主演のミキさんはアメリカで舞台に立っているという事で、ご一緒できないのだが、なぜこういうストーリー展開にしたのかというと、好きな映画に、ジム・ジャームッシュ監督の『ブロークン・フラワーズ』があって、主人公が過去のガールフレンドの部屋を訪れ、部屋はそれぞれの美しい世界があるというもの。それを今回再現したいと思った。少しおかしな女の子たちだが、それぞれの動機と理由で、主人公がプレイするゲームに参加するわけ。

 

 

 

ドニ・ラヴァン
撮影の最後の方で声を掛けられ、ジョージアの撮影に来て欲しいと言われて、3日間で撮影をした。この場には来られていないトゥルパン・カマトバさんと同監督の『Tuvalu』で共演した事などを思い出した。今回、初鑑賞したが、美しくて、詩的で、普遍的な良い作品に仕上がっている。

 

Q『Tuvalu』でトゥルパンさんのブラジャーの匂いをかぐというシーンがあって、それを覚えていらっしゃるか。監督の好みは変わっていないのか。
・今回の映画のブラジャーは最終的にトゥルパンさんのものだったので、『Tuvalu』と同じブラジャーなんじゃないかと思ってしまいました。今回は、急遽参加だったため、シナリオをほぼ読まずに撮影に臨み、今回初めて観て意図が分かったのだけど、ブラジャーの話だけでなくて、『Tuvalu』との共通点があったような気がした。例えば、主人公が線路に鎖で繋がれるシーンは、『Tuvalu』で爆発直前の廃墟に鎖で繋がれるシーンと通じているところがあった。映画の中で感じられる愛とか優しさとか慎み深さとか、そういったものとすごく共通しているなと思う。長編でありながら、台詞がないというのは詩的で素敵だと思う。

 

 

 

パス・ヴェガ
監督が言ったように、この映画が完成したのはほぼ奇跡。ストーリーがとても素敵で、脚本も素敵で、素敵なキャラクターが登場する映画だったので、瞬時に恋に落ちた。この映画が描いているのは愛の必要性。とても美しく、とてもキュートな映画に仕上がった。

 

 


フランキー・ウォラック
日本語で「日本語を学校で勉強しました。」と挨拶。
日本語を七年前習っていたが、ほぼ忘れてしまった。この作品の撮影は大冒険だった。印象に残っているのが、オーディションで監督が、音楽をかけ、自由に踊らせてくれた。撮影もオーディションと同じように自由に踊らせてくれたので、のびのびとできた。今回初めて作品を観て、それぞれの役者さんが登場する世界観や色味、監督の作風を堪能できた。

 

 


イルメナ・チチコヴァ
2回目の来日なのだが、前回来た時から日本が、心に残っていた。今回初めて作品を観て、生命の詩、愛を探す映画が堪能できた。撮影は自由で、珍しい体験だった。監督は直感的に撮影して、実験好きで、色々探索しながら撮り、限界に挑戦するので、面白い体験だった。

 

 

サヨラ・サファーロワ
素晴らしい作品に出来上がった。羊との撮影で、羊が鳴き止まないなど、大変な思いをして、大冒険だった。

 

  

ボリアナ・マノイロワ
素晴らしいキャスト陣が揃っていて、主演のミキさんが素晴らしい。参加できて嬉しく思う。美しい作品を紡いでいる。

 

 

 

 

 

Q台詞がない物語というのは、台詞で人物像を伝えることができないというリスクもあると思うのだが、どうやって役者とキャラクターを作り上げていくのか。

 

・監督
台詞のない映画を作るときの難しさは主に脚本を書くとき。ふさわしいストーリー、ふさわしいイメージを持たねばならない。台詞がなくて物足らないというシーンを削らなければならない。キャストとの仕事は、キャストに頼りきりで、こちらからキャラクターを演じてと押し付けたことは一切ない。みなさん才能豊かな素晴らしい役者陣。自ら芝居で見せてくれた。どこまでが素で、どこまでが芝居なのか分からないほど。役者陣の芝居は200%の説得力があった、とても辛い撮影だったが、みなさんと働くことができて、付いてきてくれて嬉しく、誇りに思う。

 

・ドニさん
『Tuvalu』の時に脚本を読んだことを思い出した。その時も、会話のない撮影だったが、シナリオに非常に細かくアクションの描写がされていたというのを思い出した。シナリオ自体を読むのは大変だったが、その通りにやってみると、求められていたものがこれなんだと分かるようなものになっていて、音楽の楽譜が正しい音で表現されるようなもの。その通りやったらマジックのようなものが出来上がった。

 

 

✳︎以上は、鑑賞した回に行われたQ&Aの日本語訳を書き起こして、一部編集したものになります。

 

 

 

以上、『ブラ物語』感想でした。ありがとうございました。