シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『半世界』

 

 

 

 

 

関心を持たないから

 

 

 

 

 

 

『半世界』

 

 

 

 

 

 

あらすじ
  自衛隊を退職して、瑛介は久しぶりに地元へ帰ってきた。地元で家業を継いだ2人の友人、絋と光彦に再会するも、瑛介はそのまま家に引きこもってしまう。そんな瑛介を見かねた絋は、自分の仕事を半ば無理やり手伝わせることに。自分の子どもがいじめられている事には鈍い絋だが、瑛介の事は気にかけている。そんな中、瑛介は徐々に心を開いていくが、一方でー。

 

 

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感想
  東京国際映画祭コンペティション部門「観客賞」受賞作品。
  主役の稲垣吾郎さん、長谷川博己さんという役者陣に注目が集まる本作ですが、2人の旧友である光彦役の渋川清彦さんが非常に良い演技をしており、物語に妙味を加えていました。監督のやりたい事、伝えたい事は分かります。分かるんですが。
  キャストは人気のある方たちですし、東京国際映画祭で「観客賞」も受賞した事から、多くの人が観る映画になるでしょう。この映画を入り口に、この映画で取り上げた題材を考えて頂ければなと個人的には思います。

   2月15日公開です。

 

 

 

 

観ても良いかも!!!

 

 

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みます。↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

 

  惜しいなぁ、という感想です。監督のやりたい事、分かるだけに、未来につながるような題材の取り上げ方をして欲しかったと思います。


  まず、男性間の関係性から今回の物語を描きたかったのだと思いますが、相当な理由がない限り、今の時代にそんな描き方をする必要性はないと思います。そして、本作にそのような理由は感じませんでした。本作は、女性同士の会話がないという、これまで散々繰り返されてきた映画のコードの典型だったと思います。


  2つ目に、いじめに対する対処法です。腕っぷしのあるおじさんが、喧嘩の仕方を教えてくれて、それを実行する、ひと昔前のカタルシスのある対処法ですが、現行においては周回遅れの発想だと思います。田舎ゆえ、頼れる機関がないという背景がありそうですが、だからこそそこに相談機関といかにつなげるか、学校と親と地域がどう連携するかの見せ場だと思うのです。


  3つ目は、"コンバットストレス"についてです。これを取り上げた事自体はとても良かったです。"PTSD"ではなく"コンバットストレス"という用語を用いた事で、観客にも印象が残りやすく、関心が向いたのではないでしょうか。ただ、そこにフォーカスを当てる時間が短かったように思います。「お前らの責任だ」という台詞は観客にも届いて欲しいものだったはずですが、控えめで弱い印象を持ちました。もう一段階か二段階ほど演出を重ねても良かった気がします。

 

 

 

  本作を東京国際映画祭で鑑賞した際は、他の作品の上映回とは違って、女性の観客がかなり多かった印象です。やはり稲垣吾郎さん主演だった事が大きいのでしょうか。稲垣さんファンの方には大変言いづらいのですが、今回の稲垣さんは正直役にはまりきっていなかった印象です。稲垣さん演じる主人公は、田舎育ちの無骨なヤンキーの延長にいる大人といった役どころでしたが、稲垣さんご自身の優しい感じが随所に出ており、ところどころ役にはまりきっていない風の台詞がみられました。オラつきが良く出来ているところもあるのですが。ただ、これは稲垣さんだけの責任というよりも脚本にも責任があると思います。明らかにただの状況説明でしょ、それは、という台詞があるなど、口語として良くない台詞が散見されました。
  総じて他の役者さんの演技はとても良かったと思います。脇を固める池脇千鶴さんや前述した光彦役の渋川清彦さんがとても良かった。渋川さんのおかげで、主要三人の距離が縮まった良い空気感が演出されていたと思います。

 

 

 

 

 

東京国際映画祭「観客賞」受賞について


  前述した通り、恐らくこの作品は他作品と違って稲垣さんのファンの方々がたくさんいらしていたのだと思います。自分の好きな人の作品は高い評価をつけたくなる気持ち、分かります。

 

 

 

 


演出についての雑記

 

以下は、本作の気になった演出についての雑記です。

 

・音楽の不一致感が、気になりました。

 

・納棺のシーンで「棺を男性の方はお持ちになってください」という台詞がありますが、これはこの作品というより、この言葉自体が不適切ですよね。何で男性に限定する必要があるのか、未だに日常的にこんな言葉を使う人が見られますが、やめてほしいと心底思います。本人は無自覚なのでしょうが。

 

・葬儀のシーンで、天気雨が降る際の「狐の嫁入り」のセリフは、ノイズにしか感じなかったです。曇天の中の雨にしたかったけども、日程的に仕方なく天気雨という事にした故の台詞追加だったのだと思いますが、シリアスなはずのシーンに余計な弛緩が入った印象です。「狐の嫁入りか」ぐらいの台詞で十分だったのではないかと。

 

・自然の風景ですが、東京国際映画祭の他作品と比べると美しさに欠けたなと思っています。他の作品が綺麗過ぎたというのはあると思います。

 

・この記事を書くにあたり、予告編を観てみたのですが、予告編にがっつりテロップが入るという形式になっていて、これはないなと思ってしまいました。映像情報とナレーションで十分、情報伝わってると思いますよ。

 

 

 

 

 

 

 

関連リンク

  以下のリンクは、東京国際映画祭で行われたプレス向けQ&Aとインタビュー、上映Q&Aです。


インタビュー 

 

プレス向けQ&A

 

上映後、監督Q&A

  私が観た回のQ&Aの内容で、上記の公式書き起こしに載っていなかったものを、以下に追記しておきます。

・瑛介に絋が雨戸をピシャッと閉められるシーン、山の仕事を手伝ってくれと言って玄関のドアピシャッと閉められるシーン、最後に瑛介がお棺のふたを閉めるシーン、というこの3つのシーンは、繋がっているという思いで、撮っていました。

・心象風景の1回目のイメージのあと、絋は顔を洗ってますよね。1回目のイメージ、寝ている時に頭に浮かんだものですけど、絋は実は自分の最期までイメージの中で見ているんです。自分が火の中でうなだれていく姿を。だから、顔を洗っている。映画では、途中までしか見せていないけども。でも、自由に考えてください。僕が言ったことが正解ではない。そのつもりで撮ったという事です。

 

 

 

 

 

 

以上、『半世界』感想でした、ありがとうございました。