シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『ザ・リバー』

 

 

 

 

 

 

川は望みを叶えてくれるって

 

 

 

 

 


『ザ・リバー』
   英題:The River
   原題:Ozen

 

 

 

 

 

 

あらすじ
  外界から離れ、砂漠に囲まれて暮らすある一家。その長男アスランは、下の4人の弟の世話を父権的な父親に任されている。無邪気に兄弟で遊ぶ姿は微笑ましいが、一方で父親から課せられた労働をやらなければならない。休みのひととき、5人は新たな遊び場として、流れの速い川を見つけ出す。川遊びに夢中になる4人と幼い末っ子。プリミティブな暮らしが続く中、ある訪問者が訪れる。

 

 

 

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感想
  第31回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  美麗な映像と構図を決めに決めた画の中で、静かに降りかかっていく出来事は、5人の兄弟と共に観客を翻弄していきます。ある仕掛けが作動し始めると、もう画面を見つめざるを得ませんでした。川の水面の美しさは、ある予感を滲ませつつ、あり続ける。父権的な構造の中で、権力を使う者と使われる者がどうなっていくのか、自然を人工的に配した舞台設定の中で行われる、興味深い試みでした。この作品をどう読み取るか、観客に委ねている監督のスタンスにも好感が持てます。

 

 

 

 

 


観ても良いかも!!!

 

 

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みます。↓↓↓

 

✳︎ Q&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートには掲載されていないものになります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ネタバレ感想

 

  映画で用いられる事の多い三幕構成で、本作を観ていくと、一幕目は舞台設定の紹介と二幕目への伏線、二幕目はカナットという異物との接触と混乱、三幕目は兄弟の緊張関係とその弛緩といったところでしょうか。


  上述しましたが、一幕目はとにかく美麗な映像と兄弟たちの決め決めの構図が目を引きます。その中で起こる無邪気な遊びの姿は見てるだけで楽しいものですが、その後の児童労働との対比によって、限られた舞台での僅かな楽しみだという事が伺えます。


  二幕目は何と言っても、異物カナットの登場でしょう。あまりの唐突さに笑みが浮かびました。一幕目で流れの早い川が出てきた時、これは誰かが流される予感しかしない、末っ子かな、そこから物語が展開していくのかなと思っていたところに唐突に登場でしたからね。それまでの楽器音楽による劇伴に、カナットが持つゲームから流れ出す電子音楽が鳴り出して、面白さいっぱいの文化ギャップでした。そして、結局カナットが川に流され、三幕へ。


  カナット殺しの共犯関係の下、兄弟の弱味を握る長男が権力を手に入れていきます。父親の言いつけ通りに。権力があるからこそ、密告などによってさらに弱味を手に入れる事ができ、権力が強まるという構造も現れます。この構造の現れは興味深かったものの、カナットの死で変わったのは兄弟間の力関係だけで、その後父の死の予感と共に父権からの解放を予感させますが、私は物足りなさを感じました。

 

  この映画のテーマに父権があったと思いますが、限りなく人工的に舞台立てしておきながら、その深掘りをもう一つ二つできなかったものかと思ってしまいまいます。主要な登場人物を男性とし、唯一出てくる女性の母親が家事に徹して物語に絡んでこなかったのも気がかりです。その人物配置が何か機能していたかというと、そうではない気がします。

 

 

 

 

 

 

監督によるQ&A書き起こし

 

  東京国際映画祭にて、エミール・バイガジン監督が登壇され、Q&Aが開かれました。その際におっしゃっていた事を記したいと思います。
  このQ&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートには掲載されていないものになります。

 

 

・映画作りは気持ちが先、ストーリーが後から浮かんでくる。

 

・ロケーションは、カザフスタンの南部で、川は労力をかけて探した。

 

・監督は脚本、撮影、編集、プロデューサーを兼ねている。

 

・カザフスタンでは商業映画はファイナンスがされる。アート映画は合作で作られることが多い。

 

 

・本作は三部作の3作目。前作、前々作も10代の青年の物語を描いていた。

 

・前2作は痛みを伴う作風で、今作ではより解放を描いた。特に、最後に踊っているシーンで解放を描いた。

 

・精神的な進化、内面的な進化、感情を解放したいという思いがある。

 

・映画の中の子どもの姿はフィクションで、カザフスタンを反映したというわけではない。ノアの箱舟をバックグラウンドにした。

 

・ロシア語を話すカナットは、人間というよりも物という存在。兄弟間にあった関係性を破壊すると共に、確認する存在でもある。カナットに神や悪魔を見出す方もいるかもしれない。観客の解釈次第で変わると思う。

 

・家の中に吹き込む風は、カオスの象徴。

 

・奇跡というものは映画の中には起きていなかった。

 

・この作品を自由に解釈して構わない。
その解釈に監督自身は反応することはない。もちろん意図はあるが、全てを話すのは避けたいと考えている。


✳︎鑑賞した回に行われたQ&Aの日本語訳を書き起こして、一部編集したものになります。

 

 

 


演出についての雑記

 

以下は、本作の気になった演出についての雑記です。

・家の壁、丘、浜、川、の場面などでの兄弟の意図的な構図、人工的な人の配置は読み取り心をくすぐられます。

 

・動物の象徴的な使い方がなされていた気がします、十字架とカラスなど。

 

・カナトの登場シーンのセグウェイ&サングラス&銀色の服の組み合わせ、面白かったです。

 

 


以上、『ザ・リバー』感想でした。ありがとうございました。