シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『ヒストリー・レッスン』

 

 

 

 

 

音楽かけていい?

 

 

 


『ヒストリー・レッスン』
           英題:History Lessons
           原題:Clases de Historia

 

 

 

 

 


あらすじ
  定年を迎え、なお高校で働く教師のヴェロニカ。夫のいる家で生徒の丸つけをしたり、子どもが孫を連れて遊びに来たりする日々を過ごす。日々を過ごすも、仕事にも家族にも情熱があるようには思えない。そこへ、勤める高校に転入生エヴァがやってくる。エヴァは高校で誰とも付き合いを見せない。授業中の指導で互いに傷つけ合ったヴェロニカとエヴァ。停学になったエヴァが、なぜかヴェロニカの家に通うようになり、、。

 

 

 

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感想
  第31回東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  この作品こそ、最後まで見通す必要がある作品です。ヴェロニカの口から語られる真意は、劇中の場面場面とつながっていくでしょう。徐々に、徐々に自己を開示していくヴェロニカ。その姿から見えてくるものを観客が受け取った時、抑圧が人間の一部を押し込める事の痛ましさを感じられるのではないでしょうか。
  少しずつ、こういった作品が増えてきている実感がある現在、本作が映し出すような人間の姿が早く、人口に膾炙していって欲しいものです。

 

 

 

 

見ても良いかも!!!

 

 

 

 

 

以下、ネタバレを含みます↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ⇒ネタバレ感想


  エヴァのダンスのシーンから、官能的にエヴァを描くなと思っていたのですが、あれはラストへの伏線になっていたのでしょうね。ヴェロニカの告白に、この作品の全てが込められていたと思います。告白に至るところ、良かったです。そして、それに応えるエヴァも大変良かった。これから2人はどうなっていくのでしょうか。


  レズビアンやゲイが作品に登場する事が多くなり始めた昨今、この映画のように、同性を好きになった事があるがそれを押し殺して歳を重ねた人がいる、という事にも、ようやくスポットが当たり始めてきたように思います。同性愛の描き方やスポットの当て方に幅が出てきているのはとても好ましいことだと思います。そういった作品が作られること、それ自体に意味があると思っています。人によってセクシュアリティは移ろいがあるもの、それぞれに素晴らしい体験があるものだと伝わっていって欲しいです。

 

 

 

 

  ただ、本作に関しては上記のテーマより、個人的に舞台立ての方に気が散る要素があり、おすすめできる作品とはなりませんでした。高校教師としてヴェロニカは登場するわけですが、仕事に対して情熱があるようには思えない姿が描かれます。これは、エヴァとの交流による老いと若さ、生と死の交錯で解放される、後半の姿との対比のためだったと思うのですが、その教育者としての様子に引っかかってしまいました。まず、エヴァが転入してきていきなりの授業なのだから、アイスブレイクの1つや2つやるべきで、紹介も何もないのだから、ひとりぼっちでいるのは当たり前だろうと。携帯電話を取り上げる時に、説明もなしに校則だからと取り上げるのは教育ではなく、ただ管理にあぐらをかいた行為だろうと。そして、反抗するエヴァに対して、ビンタとか真っ先にやってはいけない、身体に対して罰を与える事は百害あって一利なしだろうと。

  それは演出だから、とか言われそうですが、映画に登場する教育描写は一昔前のステレオタイプなものばかりというのが私の印象で、効果的な教育の仕方が現場で出てきているのに、それを取り上げて反映させないのは問題があるように思います。教育者として生徒に向き合ってこなかったヴェロニカが、エヴァを見つめて次第に向き合っていくのは良い、良いんですが、、。教師という役柄がただの舞台装置にしか映りませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

演出についての雑記

 

以下は、本作の気になった演出についての雑記です。

 

・ヴェロニカが解放されたのは、エヴァのおかげが大きいですが、歳をとり、ガンを患って、ようやく自分に正直になれたという面もあると思います。そこまでにならなければ自身を解放できない現在の構造、目を向けていきたいです。

 

・エヴァのパートナーの友達トポがグイグイにヴェロニカを口説くのがとても良いと思いました。年齢に関係なく、本当にグイグイで、パーティの参加者もヴェロニカに違和感を持たずダンスしており、良かったです。

 

・後半の旅に出てから登場する廃電車のロケーション良いですね、ああいう目を引くロケーションはそれだけで見ていて楽しめます。

 

・ヘアバンドを奉納し、教会から外へ出ていくシーン、美しかったです。

 

 

 

以上、『ヒストリー・レッスン』感想でした。ありがとうございました。