シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『愛がなんだ』

 

 

 

 

 

 

 

愛がなんだ

 

 

 

 

 

 

 


『愛がなんだ』
   英題:Just Only Love

 

 

 

 

 


あらすじ
  テルコは未だにマモルの恋人ではない。5ヶ月前に出会って以来、マモルはほぼ毎週、金曜日にテルコを呼び出して飲みに誘う。だから、テルコはマモルのためにスケジュールを空けておく。約束してなくても。マモルのためなら、仕事も二の次だ。でも、テルコは未だマモルの未来の中にはいない。テルコは落ち込まない、ごはんは美味しい。それがテルコの良いところ。愛がなんだ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

感想

  東京国際映画祭コンペティション部門出品作品。
  恋愛の、一筋縄ではいかなさ、好きな相手と一緒に夜を過ごしても、その後もずっと側にいられるとは限らない難しさ。人と人のコミュニケーションで恋愛は成り立つわけで、片方の思い通りになんていかないのが、当たり前のはずなのだけど、それをしばしば夢見てしまう愚かさ。分かってはいるんだけど、という欲求の有り様をスクリーンに映し出す本作。
  登場人物それぞれが抱くそれぞれのモヤモヤ、楽しむことが出来ました。甘さだけで押し通さない、恋愛映画の良作だと思います。気を許す人と、あーだこーだ言いながら観るのも良いかも。4/19公開予定です。

 

 

 

 

 

おすすめです!!!!

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 


以下、ネタバレを含みます↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想

 

  テルコが「私でいいじゃん」とマモルに伝えて一夜を過ごし、結ばれたように見えたところで、終わりかなと思った筆者。昨年ヒットした『勝手にふるえてろ』が脳裏の隅にあったからでしょうか。でも映画は終わらず、あ、まだ続くんだと思った時点で、筆者はこの作品に入り込んでしまっていたようです。

 

  主人公テルコが見舞われる状況はなかなかシビアですよね。マモルのために仕事をクビになって、バイトで生活をつないで、それでも結局マモルの恋人にはなれなくて、自分の気持ちを偽ってまでも近くにいる事を選んだテルコ。「もはや好きでも愛でもない」。周りから見たら、止めたくなるような事でも、当人の間では有り得るような関係性、在り方は存在するのだと思います。ただ、本当にそれでいいのかどうかは、当人も周りも、見極めなければいけないのだろうと思うのです。それが難しいのですけどね。

 

  気持ちが揺れ動くような状況にいながら、テルコ自身は落ち込み過ぎない、それが本作の良いバランスと軽さになっていたと思います。そうでなかった場合の鬱々さは、中々のものな気がします。(追記)原作では、テルコはしっかり落ち込んでいました。小説の作風も相まって心にずっしりくる描写ではないのですが、映画のような軽さではなかったです。その意味で、原作の翻案は上手くいっていたのかなと思います。
  テルコと合わせ鏡のような仲原は、葉子との関係に思い悩んでいましたが、仲原もそこまで鬱々としているわけではないのですよね。仲原は葉子と関係が出来てから長い時間経っているからでしょうか。それでも「幸せになりたいっすね〜。」の言葉には実感がこもっているのが何とも。幸せは、なるものじゃなく、付いてくるものだと思うのです。とか言いたくなるぐらいに、入り込んで観られました。

 

 

 

 

 

 (追記)

原作について

  本作の原作は、2003年に刊行された角田光代の「愛がなんだ」です。映画を観たあとに本書を読むと、テルコが場面場面で内心どう思っていたのか、その輪郭が分かっていきます。本書ではテルコの内心が映画以上にだだ漏れです。そのため、マモルの事を考えているテルコの頭の中が分かり、そのどうかしている感が4割増しとなって伝わってきます。マモルのクソっぷりもパワーアップです。個人的に本書は、"2003年当時"に、"男に尽くす女"という構図ではない形で、"女性が諦めもせず、ただ一方的に男性に恋をするとどうなるか"をあえて描いた小説なのかなと思いました。


  映画では、本書に出てくる人物を1人に統合させたり、より人物描写を膨らませていたりと、今泉力哉監督と脚色の澤井香織さんが様々に翻案を試みています。現在の時代に合わせた部分と、脚色をする上で思い入れたのであろう部分が、映画の良い風味を醸し出していたのだと思います。特に仲原について内容が膨らんでおり、それ故にとても良い場面が映画内で加わっていたなと思います。個展の場面、好きでした。そして、別荘パートの翻案はとても上手かったと思います。原作では別荘へ行ったのはテルコとマモルとすみれだけ。映画では、そこに仲原を加え、仲原を媒介に都合のいい存在について言及し、言い合いに。そして、マモルが擬似的にテルコとの関係について話さなければならなくなるという、上手いREMIXでした。それぞれの関係を、それぞれの口から話すという構図はひりひりでした。


  今から16年前の作品であるため、現在からみると時代を感じる描写や価値観が書かれている本書。その時代の現在地を描いた作品は、時代が進むと少なからずそういったズレが出てしまいます。ただ、そういったズレを後世が感じるのを前提に、あえてその役割を引き受けて、その時代の現在地を書いておくというのは意義がある事だと思います。今回、本書を読んで、現在地はここまで進歩して来られたのだなぁと感じることができました。

 

 

 

 

 

 

 

関連リンク

  以下のリンクは、東京国際映画祭で行われたインタビューとプレス向けQ&A、舞台挨拶、上映後Q&Aです。私が鑑賞した回のQ&Aにて、今泉監督は、「自分もそうかもしれないですけど、今、相手をあんまり好きになれない人が多いかもしれないですけど、誰かを好きになるという事の魅力は感じていて、そこがいつも片思いを描いている部分です。」と仰っていました。

 

インタビュー

 

プレス向けQ&A

「役者さんが役に入りきっている、役を掴みきっているような時は気をつけなくてはいけない。役者さんが気持ちよくなると、エゴが出てきてそれに観客が引いてしまう。監督も役者も不安になりながらやる方が面白いものが撮れると思う。役者さんが役になるためには、その役を思いっきり掴んでいない方が良いと思う。」この部分とても興味深かったです。↑

 

舞台挨拶

 

上映後Q&A

 

 

 

 

演出についての雑記

 

・テルコがスミレを夜の帰路でラップ風にディスるあたり、少し『勝手にふるえてろ』のミュージカル風独白「絶滅すべきでしょうか」を思い出しました。セリフを曲調にしてるっていうだけのつながりな気がしますが。

 

・映像的な演出、テルコが2人いる、子どもの時のテルコが一緒に銭湯に入ってるという、視覚的なマジック、楽しめました。原作を膨らませた映像的な良い演出でした。

 

 

 

 



 


  以上、『愛がなんだ』感想でした。ありがとうございました。