シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『女王陛下のお気に入り』

 

 

 

 

ふたりが私のために争うだなんて、最高じゃない?

 

 

 

 

『女王陛下のお気に入り』
             原題:The Favourite

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ
  18世紀初頭のイングランドは、アン女王の治世だった。国を治めるためにやらなければいけない業務は山盛りだが、アン女王は痛風が痛い。おかし好きだし、ウサギは可愛い。そんなアン女王を支えるのは、旧友であり付き人でもあるサラ。アン女王に政治の助言をし、何でも臆せずコメントしている。そんな2人の親密な関係を知った元貴族の侍女アビゲイルは、貴族に返り咲くため、頭を使って行動し始める。

 

 

 

 

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感想

  第31回東京国際映画祭で一足先に見てきました。
  面白い!!今だからこその映画という感じがします。歴史もので堅苦しいかと思いきや、主役3人によるユーモラスが冴え渡っています。
  近年のエマ・ストーン出演作品はクオリティ高いものばかりですが、本作もアビゲイル役のエマの演技は素晴らしいですね。サラ役のレイチェル・ワイズ、アン女王役のオリヴィエ・コールマンそれぞれが織り成す演技はコミカルでありながら役の説得力がすごいです。
  ユーモアたっぷりの作品ですが、時代背景や美術による演出は目で見ていて楽しいものばかり。ぜひ、ご覧になっていただきたい。
  祝、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」!祝、アカデミー賞「主演賞」!

 

 

 


おすすめです!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


以下、ネタバレを含みます↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想


  非常に面白い秀作でした。全8章の構成になってますが、一章毎にタイトル出るたび、わくわくでした。


  中でも、18世紀初頭の世界観に女性同士の性愛関係を持ち込み、それが実在の女王と歴史の流れそのままを土台にしているというのは、今の時代の映画だなと思いました。非常に良かった。関係性がしっかり物語の推進剤になっており、性愛描写に終始するわけでもなく、他の要素もふんだんに盛り込まれているのも好感でした。

 

  また、野党党首ハーレーに代表される男性陣の衣装や存在感も良かったですね。当時の貴族男性はカツラを被り、化粧をして着飾る文化だったのですが、ここまで分かりやすく美術で示した作品も、なかなかないのではないのでしょうか。
 

  ハーレーのような男性がいつもアビゲイルを突き落としてきた事に対して、次第にアビゲイルが主導権を握り、手玉に取っていく様は痛快でしたね。はじめは狙っていた相手に「Rape me」と言って倒れ込んでいたアビゲイルが、結婚初夜に狙っていた相手を文字通り手玉に取るブラックユーモアさは、とてもキレが良かったです。

 

 

 

 

監督


  以前から悪夢的なブラックユーモアを描いてきたヨルゴス・ランディモス監督ですが、これまでは俗世間からは浮いた、浮世離れしたようなブラックさだったのが、本作ではかなり世間と近い地続きなブラックさを描いているなという印象を受けました。その分、入りやすい世界として、見慣れたセレブのドタバタを見るように楽しむ事が出来ました。
  とはいえ、その時代っぽさを残しつつの美術による再構築は見事で、目で見ていて楽しい演出ばかりでした。ハイライトとして全裸の化粧をした男性が楽しそうに仲間に果物をぶつけられているあのシーンとか面白いですね。それを見たアビゲイルの「はぁ?」という感じ含めて良い。男性の愚かさが象徴として浮かび上がっているようです。まさに今の作品ですね。その愚かさが、早く過去のものになって欲しいなぁと思うばかりです。

 

 

 

 


制作について


  本作の製作は、昨年のアカデミー賞を争った『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』を送り出した"フォックス・サーチライト・ピクチャーズ"。この会社が送り出す作品は本当に良作が多いです。ヨルゴス・ランディモス監督はどうやらしばらくサーチライトと契約を結んだようですので、また質の高い作品が観れそうで嬉しいですね。

  本作は11月の時点で早くも、2019年のアカデミー賞レースのトップ候補と言われています。かなりの数ノミネートされると思われますが、どんな賞をとるのか楽しみです。少なくとも、美術賞は堅いと思いますね。

  (追記)前評判通り、アカデミー賞で『ROMA/ローマ』と共に最多ノミネートとなりました。一体どうなるのでしょうか。楽しみです。

  (追追記)アカデミー賞、結果はアン女王役のオリビア・コールマンが「主演賞」受賞という事になりました。それなりの数の受賞を期待していただけに、少し寂しくもありますが、それだけ2019年のアカデミー賞は良作ぞろいだったという事だと思います。美術が見事な本作でしたが、対抗馬の『ブラックパンサー』に軍配があがる事になりました。『ブラックパンサー』の美術も見事なものですし、大好きな作品なので、これはこれで嬉しい結果になりました。

 

 

 

 

 演出についての雑記


ここからは、本作品を彩る演出雑記です。

 

・アン女王を巡る、サラとアビゲイルの対立の果てに、アビゲイルは勝利を収めました。しかし、アビゲイルは、サラのようにアン女王と対等な関係になれず、上下関係におさまってしまいました。それを、最後、アン女王に頭を押さえつけられるアビゲイルで視覚的に表現するあたり、面白いですね。

 

・アン女王の姿にはどうしてもトランプが重なって見えてしまいます。自分に都合の良い意見を採用してしまう傀儡のような姿に。果たしてサラのような人物はトランプの身の回りにいるのでしょうか。

 

・本作の美術のハイライトとして、サラの傷を隠すための眼帯姿があるのではないでしょうか。その姿は"美"の一言です。サラといえば、射的競技の凛とした立ち姿も印象的でした。

 

・本作の特徴的なカットに魚眼のように周縁部が歪んだものがありました。物理的に長い空間や広い空間のぽっかりとした部分の印象を薄め、被写体をより印象付ける効果的な演出になっていたと感じます。

 

・ヨルゴス・ランディモス監督の作品には動物がいつも印象的に登場するのですが、今回はうさぎ、アヒル、ロブスターなど様々いました。ロブスター登場に関しては以前に『ロブスター』という作品があったので、微笑んでしまいました。アヒル?ガチョウ?のレースに興じる貴族の描写も面白かったです。

 

 

 


以上、『女王陛下のお気に入り』感想でした。ありがとうございました。