シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『ROMA/ローマ』

 

 

 

 

君たちはどう育っていくのだろう

 

 

 

 

『ROMA/ローマ』

    原題:ROMA

 

 

 

 

あらすじ
  1970年代、メキシコのローマ地区にある家で、住み込みメイドとして働くクレオ。家の雑務をこなしながら、時には同僚と遊びに出かけ、Wデートを楽しんだりしている。雇用主である夫婦の末っ子とは仲良しで、離れがたく思うほど。微笑ましい日常風景に挟み込まれる足音と共に、やがてやって来るものは。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

感想
  第31回東京国際映画祭にて、一足先に鑑賞してきました。
  モノクロの世界が映し出すのは、人と人の関わり合いの脆さと、時折の確かさではないでしょうか。そこには、自分勝手に振る舞い、協力の姿勢を見せない男性と、その影響を受けざるを得ない女性という構図があります。その中で抱きしめ合う登場人物たちに、次第に私は寄り添っていく感覚を覚えました。この感覚を、この映画を観た人全てが感じられればいいなと思います。もちろん受け取り方は、人それぞれだと思いますが、この映画が届ける意味を、感じて、考える時間が今の世界には必要ではないでしょうか。
  『天国の口、終わりの楽園』や『ゼロ・グラビティ』の名匠アルフォンソ・キュアロンがこの時代に作り上げた作品、ぜひご覧ください。
  12月14日からNetflixにて配信中です。祝、ヴェネツィア国際映画祭、「金獅子賞」!!アカデミー賞「監督賞」「外国語映画賞」「撮影賞」!!3/9から、全国のイオンシネマで劇場公開するそうです。Netflixに入っていなかったから、観れなかったという方、この機会にぜひ!

 

 

 


おすすめです!!!!

 

 

 


以下、ネタバレを含みます。↓↓↓

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレ感想



  2017年より、映画界から火がついた"#Metoo運動"によって、映画界には大きな変化の時期が来ていると言われています。最近は特に女性の描かれ方に注目して映画を観ているのですが、本作『ROMA/ローマ』も意識的に女性を描いている作品だと思います。
  本作は、主人公のクレオと雇用主のソフィの2人に大きく焦点を当てていました。クレオを取り巻く同僚や友人、ソフィを取り巻く母親や友人がおり、それぞれに女性同士のつながりが描かれていました。これまで映画に登場する女性は、女性同士の会話シーンが無かったり、あっても男性に関わる話や恋愛についてだけしかセリフがないといった事がかなり多かったんですよね。

 

 

 

  一方で、本作品で男性はどう描かれていたかというと、クレオに対しては子どもの父親となる武術やろうがおり、ソフィには浮気夫がそれぞれいました。


  特に武術やろうのクソっぷりは凄かったですね。遠くまで会いに来たクレオに対して、武術で威嚇する姿に、まじなんだこいつ、と鑑賞中に口を動かしてしまいました。「武術に助けられた」と言っておきながら、妊娠させた相手を追い払うために武術を使うって、、武士道とは。映画には往々にして女性のヌードが多く登場しますが、本作では女性のヌードが映らず、武術を披露するクソやろうのヌードが登場していました、これも意図的なのだろうと思います。非常に興味深い演出でした。男根を思わせる棒術と、何とも言えない表情で見るクレオ。Netflixでもできればモザイクなしで配信して欲しい場面です。

 
  また、武術の師範が見せた奥義を、武術を学びに来た人々がまるで出来ない中、1人クレオが事も無げにできているシーン、笑ってしまいましたが、おたおたするマッチョ男性に対するクレオのブレなさの対比、面白かったですね。こういった演出1つ1つに、愚かに行動せざるを得ない男性と、したたかに生きる女性が映し出されていたと思います。


  浮気夫に関しては、車の演出が秀逸でした。王冠ロゴの車が凱旋すると、狭い車庫では身動き取れない。ウンコを踏む。社会や家庭での男性のうまいメタファーになっていたと思います。後に雇用主が傷なんて知るかと思いっきり車庫入れしたり、クレオと一家5人で旅に出たりと1人の登場人物のようでした。軽に乗り換えるあたりも良かったですね。

 

 

 

  そして、言わずもがな、本作品で1番心を掴まれる海辺のシーン。クレオの「産みたくなかった」の一言とそれを抱きしめる5人の姿、心に刺さりました。
食器が割れる、新生児室の天井が落ちる予兆からの、暴動での出会い、死産、それらを経て、波にのまれた子どもを救いに海へ入るクレオの姿、見入ってしまいました。
そんなクレオとソフィの姿を見て育つ子どもたちの今後に、思いを馳せてしまいす。どうかどうか。

 

 

 

 

監督


  本作は、アルフォンソ・キュアロン監督自身の自伝的な作品であるようです。自身を育てくれた女性たちへのラブレターであり、映画の中に監督が入り込んでいたのではないでしょうか。クレオに可愛がられる末っ子は、恐らく監督自身で、その発する言葉も監督自身のものなのではないかと思います。
  本作のタイトルであるローマは、実際のメキシコの地名です。勝手な憶測ですが、イタリアのローマを私は連想し、ローマの階級制を想像しました。また、これもこじつけかもしれませんが、「ローマは全ての道に通ず」と。

 

 

 

演出についての雑記



以下は本作の演出についての雑記です。

・本作では、冒頭から水たまりに映る飛行機から始まって、劇中何度か飛行機が空を飛んでいき、最後も、飛行機が行ったり来たりする空が映し出されます。恐らく、あの飛行機には雇用主の夫が乗っていたのではないかと思っています。帰ってくる夫、出張と偽って浮気相手のところに行く夫、荷物を取りに帰ってくる夫と行った具合に。

・本作は、モノクロの静謐さを彩る音楽に、本作の展開の予兆が挟まれていたと思います。クレオが洗濯をしながら口ずさむ「あなたは私が貧乏だから離れていった」というような歌詞の歌、その後武術やろうはクレオに向かって、「このメイド風情が」的な捨て台詞をはいたりしていました。あとは、森林火災のシーンで印象的に歌っている人物が登場していましたね。

・後は、ソフィの元職業が生化学者だったりする設定も良かったと思います。女性の職の描き方も重要なポイントです。

・犬も登場人物として面白い効果を出していました。牧場主の家に飼い犬の首の剥製がたくさんあるシーンは笑ってしまいましたね。

 

 

 

 

 

  様々に工夫が凝らされ、意図的に演出された人物たちを描いた秀作でした。
  女性と男性という点に着目しましたが、セクシュアリティは多様で、それ以外のあり方もある事を一言加えておきます。

 

 

以上、『ROMA/ローマ』映画感想でした。ありがとうございました。