シネマ感覚思考 / cinema-feel-think

1つの記事内に基本、映画紹介パートと、ネタバレありパートに分けて記載しています。お見知り置きくださいませ。



映画感想:『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』












全ては踊るために









『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』
原題:The White Crow
東京国際映画祭:『ホワイト・クロウ(原題)』











あらすじ
1938年、ソビエト連邦領内の汽車の中でヌレエフは産声をあげた。バレエへの志を持つも順風満帆とはいかなかった。問題児扱いされるほどの荒々しさは、踊りたいがため。学びは全て踊るために。国家による統制の中、踊るため、ヌレエフは意思を示すー。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



感想
第31回東京国際映画祭コンペティション部門、「最優秀芸術貢献賞」受賞作品。
入り乱れる時制の見事な構成に加え、ロシアのタタール劇場の現役トップダンサー、オレグ・イヴェンコ演じるヌレエフの魅力に、とても惹きつけられる素晴らしい作品でした。
ヌレエフが意思で道を切り拓いていく姿にはカタルシスを覚えます。一方で、その荒々しさが周囲へ与える傷はいかばかりかと。そんな事に思いを馳せるほど、この作品を楽しんで観ることができました。
バレエ、絵画、パリの街並み、クレイジー・ホースなどなどなど、視覚的な美術表現も楽しめる上に、ヌレエフの人物像の魅力、オーケストラの劇伴、ストーリーのサスペンスと、良質なエンターテイメントを堪能できる作品です。
シネマ感覚思考的、第31回東京国際映画祭コンペティション、"芸術賞"!!!!
5/10に公開が決まっているそうです、お楽しみに!!
(追記)現在公開中です!





おすすめです!!!!















以下、ネタバレを含みます。と言っても、この作品はネタバレしてても面白い部類の作品だと思います。


✳︎Q&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートには掲載されていないものになります。













⇒ネタバレ感想

作り込みの完成度はトップクラスで、東京国際映画祭の「最優秀芸術貢献賞」はもちろん、「グランプリ」もこの作品になるのではないかと予想していました。
ヌレエフという努力を惜しまない1人の天才が、障害を乗り越えていく物語でありながら、そこに内包された野心への追及、自己の追及は観客への普遍的な提示になっていたと思います。
それに加えて行われる、終盤の亡命劇のサスペンスフルな展開は、エンターテイメントとしての面白みが重なった見事なつくりでした。


作中でヌレエフはプーシキンの妻ゼニアと関係を持ちますが、その後英語圏の男性とベッドを共にしています。それが自然なカットの流れで映し出されていくのはとても良かったです。
また、パリ公演最終日打ち上げのダンスフロアで女性カップル、男性カップル、男女カップルとそれぞれ映し出されるところも細やかな演出ですが、非常に良かったです。
こういう表現が映像媒体でどんどん増えていって欲しいなと思います。





2018.tiff-jp.net




プロデューサーによるQ&A

東京国際映画祭にて、プロデューサーのガブリエル・タナさんが登壇され、Q&Aが開かれました。その際におっしゃっていた事を、書き起こしておきたいと思います。
このQ&Aは東京国際映画祭HPの公式レポートには掲載されていないものになります。



・ガブリエルさんは、レイフ・ファインズ監督の映画3本全てでプロデューサーを務めている。



・監督は、ロシア文化、その魂、精神が好き。
・監督は、若いアーティスト、ヌレエフの自己探求に惹かれた。音楽、絵画、世界を見て、自分の中のアーティストを育てていく姿に。
・そのヌレエフの姿に監督は自身を同一視したのではないか。そのため、監督のパーソナルな映画とも言える。

・監督は、ヌレエフの伝記を10年以上前に読んで、その時からプロデューサーに相談していた。
・権利を取って、長い間、期が熟すのを待っていた。
・間が空いたのはレイフ・ファインズの役者業も忙しかったため。映画作りは、他の仕事全てを犠牲にしてやる必要がある。他のことはしない。

・監督のビジョンは明確で、リアルさを追求したい、言語もキャストも完璧にしたい、商業的なところが一切あってはならないと考えた。
・そのため、監督は最初、自身は出演したくないと考えていたが、妥協してプーシキン役で出演した。監督の夢は自分の出ない映画を作ること。



・原作ではヌレエフの人生全てが書かれているが、この作品が若い段階で終わったのは、映画という比較的短いプラットフォームであれば、若いアーティストのポートレートを描きたいと思っていたから。その若さを描きたいと。
・結果、非常に美しいポートレートが出来上がった。
・続きの生涯を見たいと思ってもらえるのは良いこと、ただドラマなどでもできること。



・この映画を作る上での障害はたくさんあった。ロシア政府から当初は許可を得ていたのだが、始まる前の最後の最後でサポートされないことになり、一度やり直さざるを得なかった。



・亡命の場面は脚本家のデヴィッド・ヘアーが、存命の方と話をして、振り付けのように当時の状況を教えてもらった。そのためかなりリアルに作れたのではないか。
・クララ・セイントさんも現在存命で、プロデューサーと最終的に仲良くなれた。話を聞いて作った以上、尊重するために、彼らにとっても真実でないといけない。そしてそう作れたのではないかと思う。

・プーシキンの妻ゼニアとクララの共通性は、黒髪の美人という事。
・当時ヌレエフが離れていった事にクララは実際には傷ついた。必要なものをもらってヌレエフは前進していってしまい、疎遠になってしまった。
・その後ヌレエフは仕事に打ち込んで行き、周りに残ったのは仕事の関係者だったそう。友情よりも仕事だった。
・ヌレエフもクララを間接的に助けたことにはなる。ヌレエフはクララにマーゴ・フォンテインを紹介して、マーゴが、イヴ・サンローランをクララに紹介した。その後、クララは最終的にイヴ・サンローランの広報になり、自分のキャリアとなった。

・ヌレエフは女性と友だちにはなったが、それ以上の恋愛にはならなかった。



・プロデューサーは存命のヌレエフと会ったことがある。当時既にヌレエフはスターだったので荒々しさは感じなかったが、自身をスターとして扱ってほしいという様子だった。



・ロシアのバレエ関係者にとって、ヌレエフはバレエに革命を起こした人であり、ソビエトにいたらここまでの事は成し得なかったとして、尊敬する人もいれば、批判する人もいる。しかし、自分たちの遺産であるとは考えている。「素晴らしいけども、、」という形で全てに両手をあげることはできないようだ。


✳︎鑑賞した回に行われたQ&Aの日本語訳を書き起こして、一部編集したものになります。

以下のリンクは、東京国際映画祭で行われたレイフ・ファインズ監督のインタビューと上映Q&Aです。


インタビュー
2018.tiff-jp.net


上映Q&A(上記の書き起こしとは別のもの)
2018.tiff-jp.net




関連記事
www.cinema-feel-think.com


以上、『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』感想でした。ありがとうございました。